#地面師たち 大根仁監督
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Netflix配信で「地面師たち」全7話鑑賞。
大根仁監督というと、テレビシリーズの「エルピス-希望、あるいは災い」でテレビ業界と政治について、際どいドラマを演出された方だ。あの映画では本質に迫ることはできなかった。
今回はNetflix配信ということもあって、実話をそのままドラマ化したようなリアルな演出で、脚本も自ら担当しかなり積極的な作りになっていた。
内容は2017に実際に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をそのままドラマ化している。被害に遭った企業側を山本耕史さんが演じ、チームで活動する地面師は豊川悦司さん演じるハリソン山中という人物を中心とするメンバー。自身も地面師被害に遭ってその復讐のために地面師として活躍する綾野剛さんが主人公のドラマだ。
地面師のメンバーは、まるで「スパイ大作戦」(トム・クルーズが「ミッション・インポッシブル」として再構築)のメンバーのようだ。それぞれが役割を分担し演じ分ける。際どい緊張の中でスリル満点の地面師詐欺が行われる。
彼らを追う刑事にリリー・フランキーさんと池田イライザさん。イライザさんはこのドラマでかなり魅力的な存在だ。ネタバレになるが、リリー・フランキーさんがトヨエツ演じるハリソンに突き落とされるシーンは「ダイ・ハード」。池田イライザさんの刑事とハリソンが組み合って手榴弾を投げるシーンは「レオン」が重なる。
第1話、ドラマの冒頭で野生のクマに襲撃されるハリソンのシーンから始まるが、このドラマは豊川悦司さん演じるハリソン山中という存在に尽きる。この人物の残虐性と先読みして次々に自分に不利益な人物を殺してゆく。最後は自分の最高傑作という綾野剛さん演じる拓海との対決となる。
これはある種のエディプス神話そのものだ。「アポロンの地獄」はもちろんだが、「地獄の黙示録」然り「スター・ウォーズ」然りである。経済事件としてフィクションとなる部分が大半を示すドラマではあるが、実はこのドラマ、父親と息子の問題を描く。綾野剛さん演じる拓海は、自分が地面師に騙されて、父親が経営する不動産会社を倒産させる。そして父親は発狂して家に火を放ち、拓海の妻や子を死に至らしめる。この父子関係。
そしてもうひとつ。拓海が地面師として成長する手助けをするハリソン山中。このふたりは父と子なのだ。そして育ててもらった父への反発。このあと、拓海がどのような人生を送るかはわからないままだが、もし続編があるとしたら、拓海が地面師として君臨しているドラマになることは間違いない。そこには善と悪、生と死の境目のようなものまで描かれるはずだ。息子はいつしか父親と同じことを繰り返すのだ。
広い意味では、この関係は山本耕史さん演じる不動産会社の部長と社長の関係。刑事役のリリー・フランキーさんとその上司の関係にも重なり合う。
何度も繰り返すが、このドラマの中心は豊川悦司さん演じるハリソン山中だ。彼が社会の欲望の中心に存在する。そして土地という意思を持たないものに価値をつけて巨大な資本が交差し合う。このおぞましき資本主義の極限的存在である土地を”環境”に当てはめれば、我々の立脚する場所を顧みるのに十分なテーマと突きつけているのではないだろうか。
土地は意思を持たない。
不動産詐欺最大の山場 - 緊迫の「本人確認」 | 地面師たち | Netflix Japan
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