Eccentric(変人の時代)、「歴史の注視」

変人の出番」とは、水野和夫先生が「シンボルエコノミー」という本に書いていた言葉で、コペルニクスのような変人が社会を変える時代だという主張による。思えば吉野源三郎原作「君たちはどう生きるか」の主人公コペルくんは、コペルニクスから取っている。


そう聞いたとき、今年見た多くの映画にその兆候を見る。


ひとつは「アイ・ライク・ムービーズ」。正直言って、この映画の主人公は自分を見ているようで嫌だった。不快な映画だ。映画マニアが素人を見下す映画。もし自分がそういうふうに周りから見られてるとしたら心苦しい。そして自分に似たようなマニアがそこここに存在する気がする。


MR.JIMMY ミスター・ジミー」もまた同じ文脈にありはしないか。ジミー・ペイジを敬愛する日本人が、アメリカに進出する話しだが、こだわりが強すぎて周囲がついてこれない。変人が傲慢となる姿を追うドキュメンタリー。「ブルータリスト」(エイドリアン・ブロディが好演)も似ている。1949年の「摩天楼」をモチーフとしたこの映画は移民がアメリカの建築業界でその立場を築くものだ。しかしこの人物もまたどんどん傲慢になってゆく。「エミリア・ペレス」の主人公にも同じような傾向が重なる。変人が独裁者となる瞬間。



続編が待たれる「ウィキッド」だが、生まれながらに”変人”として育ったエルファバの孤独はいかなるものだろうか。ネタバレになるが、”変人”が社会の道具として使われてしまう恐怖とも背中合わせだ。続編でエルファバにどのようなドラマが待ち受けているか興味深い。しかし、その結末は「オズの魔法使」で結末は示されている。”変人=悪”という構図を覆すことは難しい。



これらの”変人”たちを愛したい。


特に「リアル・ペイン〜心の旅」の愛すべきベンジーは今年最も心惹かれる人物だ。周りから”変人”扱いされている、と思っているのは実は従兄弟(ジェシー・アイゼンバーグ)のほうで、ベンジーは旅先で多くの人から愛される。しかし、最後に空港で再び彼は孤独になり映画は終わる。”変人”という人気者の孤独を描き切る傑作。キーラン・カルキンの素晴らしい演技。


最後に、こうした多くの変人たちが社会を変え、停滞する社会の救世主となるかは疑問だが、とてつもない変人を「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」アメリカという国は生み出してしまった。恐れを知らぬこの”変人”は、過去に例を見ない政策を打ち出し、半ば恫喝的に突き進んでゆく。「ウィキッド ふたりの魔女」でジェフ・ゴールドブラム演じるオズが、「敵をつくり」分裂を生み出すことで支持を得ようとする。


「変人の時代」も極めて判断が危ぶまれる社会になってしまった。愛すべき変人と憎まれるべき変人に、歴史はどのような判断を下すのだろうか。


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日本の愚かな裏金議員が「ひめゆりの塔は歴史の書き換え」と発言する中、5月4日「不滅の連帯」パレードに合わせて駐日ロシア大使が日本に対し「歴史の注視が国益につながる」と発言している。それにしても日本は戦後80年、国益に叶う行為をしてきたと言えるのだろうか。そして一水会もツイートするように、こういう発言をすると「中露の手先」とレッテル貼りされる。憲法のアップデートではなく官僚を含む政府のアップデートが必要ではないかという声もある。


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