資本主義と民主主義の終焉③ 利子生活者の安楽死

資本主義と民主主義の終焉――平成の政治と経済を読み解く (祥伝社新書)
資本主義と民主主義の終焉――平成の政治と経済を読み解く (祥伝社新書)
祥伝社


第六章 長期政権と右旋回 2012-2019
安倍一強⇒戦争ができる国へ


最も重要な論点が書かれている章だ。多岐にわたる問題点を抽出している。


非正規雇用が常態化する過程を、①構造改革 ②金融ビックバン ③時価会計 ④経営と所有の分離、というそれぞれの政権が官僚の言いなりで施策したことが、そのままこの国の没落に繋がっている。


リーマンショックの再来に備えた内部留保の積み上げはROE経営を招き、経済(国民)ではなく資本を強くする経営へシフトさせる。


この原因のひとつに、1996年の小選挙区制の導入がある。選挙区でひとりしか当選しない制度になると、候補者同士の敬意が失われ、罵り合いになるという。


水野先生は、消費税増税はいずれ避けられないとしても、富裕層と内部留保への課税強化をセットで行わないと支持は得られないだろうと言う。


最後に、明仁(平成)天皇の譲位にも触れ、安倍氏が強硬に推し進めようとした憲法改正をけん制したのではないかとくくっている。安倍政権で「明治150周年式典」に明仁(平成)天皇が出席しなかったことは、天皇が当時の政権を極めて危険視していたことを意味するのではないか。天皇はお言葉で「憲法を遵守する」と強調していたことも印象的だった。個人的にはこの説を支持したいと思う。


第七章 平成とはどのような時代だったのか


短くまとめると、①理想 ②戦争 ③発展が終わった時代と説明している。


GDPの推移(2位から25位)、産業の米と言われる「半導体」のシェア(40%から6%)、そして自動車など、ありとあらゆる部門で日本の凋落は止まらない。長いゼロ金利状態も、資本が増殖できない状態がずっと続いていることを意味している。


第八章 これからの10年


2019年に出版されて5年が経過したいまこの本を読んで、お二人が占う未来は決して悲観的なものではないが、残念ながら成長の果実によってこの国をもとの状態に戻すのは不可能のようだ。ケインズが言う「利子生活者の安楽死」が意味することは、ゼロ金利で利子生活者が存在することはできないという前提で、社会が定常状態に至った可能性を示唆して終わっている。水野先生はこれを受けて、資本主義が終わっても、民主主義を終わらせてはならないと締めている。



おしまい


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