シニア右翼 その1 古谷経衡著 「未完の戦後民主主義」
古谷経衡氏の本を初めて読んだ。
これがまた実にユニークで面白い。かなりレベルの高い内容で、SNSなどで根拠もなく書き込みする人たちとは一線を引く。
SNSをめぐる争いは法廷の場を舞台として、匿名性という特殊性(まぁ自分もその類だが)の中でかなりいいかげんな内容が多いのは理解しているつもりだ。しかし、その矛先が”誰か”に向かい衝突しはじめるとややこしくなる。これらの書き込みや罵り合いが、なんとなく若い方を中心に行われているという漠然とした印象だったが、この本を読むとどうもそうではないらしい。著者は実に真面目に数値などを活用して「シニア右翼」の存在と趨勢を割り出している。
- シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか (中公新書ラクレ)
- 中央公論新社
- Digital Ebook Purchas
この本の細かい内容はここで省略するが、各章の冒頭に印象的なたとえが示される。第二章「右翼とは?ネット右翼とは?」では、藤子不二雄さんの「老年期の終わり」からのセリフが紹介される。
第一章 右側の内側
いわゆるネトウヨというと若い方の激しく罵るような書き込みという先入観だが、実はその内側はほとんどが老人だ、ということを数値を示して立証しようとしている。この原点には満州を軸とした日本と韓国の政治家に宗教団体の長を交えた遠大なつながりがあることを示す。
第2章 右翼とは何か、ネット右翼とは何か
あいまいな”右翼”の定義は『天皇主義(すべての人々は天皇の下に平等に団結)』とわかりやすく示している。ここは重要だ。そして実際の右翼と呼ばれる一部のひとたちは、この定義をおろそか(あるいは無視)して、右派言論人の言うことをオウム返しするだけの”エセ右翼”だと断じる。
第三章 右傾の門戸――ネットの波に遅れて乗ってきた人々
ここで、クリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」からのセリフが紹介される。
戦争のもっともひどいことは、降参するガキの顔面に銃を向けて撃って勲章をもらうことだ。」これは痛々しい話しだが現実だ。
ネットの波に乗って妄信的なシニア右翼が増えたのは、動画配信などによるものでもあるらしい。本は読まず積んでおくだけ。ネットや動画だけを鵜呑みにして受け売りする。ここは見に覚えのあることだ。著者の言葉に”全ての技術革新は人を鈍感にさせる”というものがあるが、思わずうなずいてしまった。
映画「ノマドランド」が示すアメリカのシニアは、政治そのものに興味を失った人たちの物語だ。資本主義を背負って進んできた社会と隔絶する人たちも増えている。彼らはシニア右翼などになる余地がない。
そもそも”保守と右翼”の違いが曖昧になるなか、著者は宇野重視氏の著書から引用して「革新が先にあり、対立するものとして保守が生まれた。」と説明している。急進的な社会変革は独裁国家に偏りやすい。社会を改良するのはゆっくりとなさないと失敗すると述べている。
第四章 未完の戦後民主主義
最終章で著者は、極めてわかりやすく戦後民主主義の日本を解説する。この国に蔓延するグレーゾーンは、戦争の反省をしないで曖昧にしたことで、このような右傾化が加速しているとしている。その原因として、戦時中まで、日本のファシズムは実は完成型ではなかったというものだ。未完のファシズムは、敗戦の衝撃も曖昧で反省する余地もない。そのことが、いわゆる逆コース(真説「日本左翼史」)、つまり戦犯で刑務所に入っていた岸信介(革新官僚)を担ぎ出して、結局戦前と同じシフトを組んでしまったというものだ。しっかり反省もできないから、同じ過ちを繰り返そうとするのだ、ということだ。
つづく・・・
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