#わが封殺せしリリシズム ③ 俘虜と天使
第三章 俘虜と天使(のつづき)
永田雅一とのやりとりを書いた「敵から学ぶ」では、政治家にも影響を与えていた永田氏と自分の作品の上映を阻害する行為があったことを推定したうえで、永田氏の「健康で才能がある限りいつか必ず一緒に仕事ができる。」と声をかけられたことを大島渚は忘れない。その後、多くの悲しい別れがあったとき、この言葉が慰めになったと言う。
松竹を退社して創造者を作り、資金的に苦しい中で多くの出会いと別れがあった中、大島が突き進んできた痕跡をなぞる。大島作品で象徴的な存在でもある佐藤慶さんが、大島の辛抱の効かなさを諭すシーンなども描かれる。
- わが封殺せしリリシズム
- 清流出版
- 本
クライマックスは「俘虜と天使」で、デビッド・ボウイが「戦メリ」に出演を決めるまでの詳細が書かれている。ニュージーランド自治領のラロトンガ島にボウイはギター1本とアシスタントひとりだけを連れて本当にやってきた。そして「ここで我々はオーシマの俘虜になって暮らすわけだ。」と言った、その言葉を聞いて大島はこの映画が成功することを確信したという。
大島渚にはどこかキャスティングで成功を確信する局面があるらしい。確か「愛のコリーダ」で松田瑛子さんがオーディションでスカっと裸になった瞬間、若松孝二と成功を確信したシーンも重なり合う。
「ただひとりの天才」武満徹についてのエピソードも面白い。「儀式」の輝通(中村敦夫さん)を三島由紀夫に出演依頼しようとしたら、テレビでちょうど割腹自殺する直前で、仕方なく武満徹に依頼したら、「私は満州男です。」と応じたやりとりは腑に落ちる。
テオ・アンゲロプロスのワンシーンワンカットについても丁寧に丁寧に示し「無人となった場所をカメラが延々と映す」シーンを”みれん”と表現し、大島にとっての”みれん”とは希望であるから、アンゲロプロスの手法を「希望のカメラワーク」と呼んでいる。
このあと、大島渚の葬儀で坂本龍一が読んだ弔辞や、小山明子さんが語る「戦メリ」の思い出など、ファンにとってはたまらないエピソードの数々が重ねられる。
今思えば、足立正生監督と握手した「Revolution+1」、大島新監督にサインを頂いた「国葬の日」、そして「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」へとつながる連鎖。そして、かつて坂本龍一さんが審査員をしていた「大島渚賞」などと、その存在が大島渚亡きあと10年を経てなお注目を集める理由の一端がこの著書に示される。
- SWITCH vol.28 No.2(スイッチ2010年2月号)特集:闘う、大島渚
- スイッチパブリッシング
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おしまい
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殿と大島監督、教授と左端の日本兵は誰🧐?。#有名人 pic.twitter.com/1XWP04Voyn
— イナズマ⚡☝️ (@Lg40dqftH6p5kux)

