異人たち アンドリュー・ヘイ監督
「異人たち」
All of Us Strangers | Official Trailer | Searchlight Pictures
山田太一さん原作、大林宣彦監督版「異人たちとの夏」は、”死”意識させる映画であったが、アンドリュー・ヘイ監督の会社は”死”を別の形と背中合わせに表現していて美しい。主人公の名前がアダムであることと、映画の中で何度も(露骨なほど)画面にそして音楽に使われているフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドがこの映画の軸になるのだ。
彼らの「パワー・オブ・ラブ」という楽曲のミュージック・ビデオはキリストの生誕を描く。そして映画のラストシーンとこのビデオの始まりはそっくりだ。その理由をここで書くことは控えるが、その美しく神々しいラストシーンは、これまでの映画の歴史にあってもかつて見たことがないほどの輝きを示す。
大林宣彦版の懐古的な親子の再会シーンとこの映画は趣を少し変えている。母親が息子を心配して色々尋ねるシーンは、両親が亡くなった時代と現代の違いを物語る。主人公がかつて内面に秘めて誰にも伝えることができなかった心境が吐露されて、彼らは愛という形のないもので結ばれてゆく。
最後に原作にはない衝撃のラストを用意していることもあって、この映画を日本人として置き去りにすることはできない。
Frankie Goes To Hollywood - The Power Of Love
Flame on burn desire
Love with tongues of fire
Purge the soul
Make love your goal
私の願いを燃え上がらせてくれる炎
流星群とともに愛が落ちてきて
私の心が澄んでいく
この愛が、あなたにとってのゴールであって欲しい
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町山智浩 映画『異人たち』2024.04.16
辛口のガーディアンが★5つ。

