#Queen ② The Rhapsody Tour
この日の少し前に、同じ東京ドームでテイラー・スウィフトのライブや、もう少し前にはビリー・ジョエルのワンナイトライブがあったりと、野球のオフシーズンを使って外国からのアーチストを中心に次々とライブが開かれる。このわずかな期間にステージセットが作られ解体される。この技術がすごいと思う。
始まる前、定刻が近づくにつれ大勢のファンが席を埋めてゆく。その間に行き交う人々を見ると外国人の方も多い。そしてライブエイドのフレディと同じランニングシャツであちこちを歩き回り「レロレロ」いって場内を盛り上げる方もいる。興奮が次第に近づいてくる。
結論から言うと、これはアダム・ランバートのライブだったと思う。彼の技術がとてつもなくすごい。フレディー・マーキュリーとは違う解釈でクイーンの楽曲を受け止めることができた。アダムの高音と伸びのある声量がドームに響き渡り聞く者を圧倒する。まさに圧倒という言葉がふさわしい。
ほぼ定刻に始まったライブはオープニングに長い長い時間をかけて、「RADIO GA GA」のイントロが始まり、場内はトランス状態へ。続いて「ハマー・トゥ・フォール」、「地獄へ道づれ」80年代のヒット曲が続き、アルバム「オペラ座の夜」からロジャー・テイラーの「アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー」、そして「バイシクル・レース」(「ジャズ」)と70年代へ回帰。車と自転車という乗り物の曲を続ける。
「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」では場内が大合唱する感動のシーンをともにする。映画「ボヘミアン・ラプソディ」で、恋人だったメアリーとの別れに使われたこの曲。そして日本人が彼らの曲の中で最も愛するべき「手をとりあって」でも大合唱が続き、涙腺がクラッシュする。胸からこみ上げるような涙は時を超える。初めて接したクイーンのライブは、自分と彼らの距離を一気に縮める。同じ空間で同じ空気の中で伝わる名曲に胸が張り裂ける。
ブライアン・メイのギターソロに、フレディの映像が重なり、時を超えてブライアンとフレディが共演する演出は見事。後半も怒涛の盛り上がりで「ボヘミアン・ラプソディ」で締めくくる。映像に「メトロポリス」からの映像が多様されていたのは思いつきではないだろう。資本主義と共産主義の対立を描くドラマに、この開場で昏睡状態となったファンが搾取された労働者のようにも見えるシーンが繰り返させる。我々は彼らの偶像を見て感動を受け入れる。
アンコールのはじめに、本物のフレディが映像でよみがえり「レロレロ」盛り上げたあと「ファック」と言って去るのも、彼らのシニカルな内面をチラつかせるものだと思う。彼らはビジネスとして仕事をし、ファンを昏睡させる。しかし社会をありのまま鵜呑みにすると危険だというようなニュアンスが伝わるライブでもある。知性と感性の高さを感じさせる強烈なライブであった。
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