離婚しようよ 大石静・宮藤官九郎 脚本 「黒塗り社会」
6月Netflixから配信されたドラマ。これはTBSが製作してNetflixで配信するというスタイルらしい。あまり意識せずに見始めたらぐいぐい惹きつけられて、脚本が「功名が辻」や「セカンド・バージン」の大石静さん(来年の大河ドラマ「光る君へ」も予定されている。)と「あまちゃん」で大ブレイクした宮藤官九郎さん。「あまちゃん」のテーストははこどのドラマで「みこちゃん」として生かされている。お二人は交換日記を交わすようにこのドラマを共同執筆したという。宮藤官九郎さんの「台本の中にメッセージが入っているのを初めて見ました。」というインタビューの言葉がとても印象的だ。
男女の脚本家を採用したことで、このドラマの狙いが浮かんでくる。3世議員の夫と、下町で育った大女優というあり得ないようなカップルが破局に向かう過程を丁寧に描くのだが、男女の立場をそれぞれ明確にしてる点で極めて優れている。
とにかく笑って笑って大笑いするドラマなのだが、演出としてはいくつかのシーンの余韻がいい。気まずい二人がエレベーターに乗り合わせるシーンとか、お互いが思うようにならないときに示す普通の表情がいい。喋ったりアクションしたりするシーンはおそらくある程度誰にでもできそうだが、人物の内面を表情で示すシーンはテレビドラマなどでは特に稀だ。Netflixとのコラボだから生まれる演出かもしれない。
ここからはややネタバレになるのだが、お互いの浮気などで離婚を決意するまでの泥仕合いはコメディとして優れているが、最後に妻が選挙を応援するエピソードはとてもよくできている。選挙というと多くのドキュメンタリーがよみがえる。世襲議員と革新政党のリーダーがガチで対決する映画があった。
正直言って、主人公の世襲議員が落下傘のように降りてきた革新政党の候補に大きくリードされて、絶望的なところから「みこちゃん」で地元で大人気の妻の力を借りて猛然と追い上げるシーンは見ていて絶望的な気持ちになった。国政選挙が地方都市のどぶ板選挙で選ばれるのかと思うと、これはもしかすると与党を支持するような結末か?と疑ったが、実はそうならなかった。投票結果を待つ選挙事務所で、妻が夫に「候補者はあなたの名前を書いたけど、政党は敵の政党を書いた」というシーンに胸が熱くなる。そして結果は僅差の落選。
この第8話と最終回の第9話の描き方がとても素晴らしくて、このしょうもない不倫ドラマのような展開がとてつもなく壮大な展開となってゆくことに心が踊る。色々な見方があるかもしれないが、この映画が最後に残した余韻は「選挙へ行こう!」というメッセージに聞こえた。ぼんくら息子を支える母親や秘書、そして後援者たちの愚かさも、革新政党が繰り出す魅力的な演説も、全てが善と悪の境にあることを教えてくれる。
結果、二人は選挙に敗れて約束通り離婚届を出す。
しかし、その後の展開もまた極めてシンパシーを感じさせる。産まれた子供を、元夫の母に預けたり、7度も離婚を繰り返す妻の母親に預けたり、富豪と貧困、それぞれの家族を行き来する小さな子供の存在を示し、よりを戻すかと匂わすが、結局再婚はしない。ふたりは戸籍を別にした父親と母親としてこの子供を育てることにする。これは結婚の意味を問うものとも考えられる。そもそも結婚とはなんだろうか?(言うまでもなく当人同士のものではない)
二人が離婚寸前で罵りあい、時に冷静になって、「なんで離婚するんだっけ?」とか「そもそもなんで結婚したんだっけ?」と自問自答するわずかなシーンにつくり手の意図を感じる。好きになることと結婚することは意味が違う。むしろ結婚することで失われるロスのほうが大きいかもしれない。それでも結婚し、そして離婚するのはなぜだろう?
このドラマは人間の存在そのものに迫り、人と人が互いに尊敬しあって行きてゆくことの意味と、与党と野党が分断するためだけに見える政治、あるいは極端に解釈するとLGBTや夫婦別姓問題など、この国、この社会を広く見渡して置き去りにしたままの社会問題をそっと拾い上げるようなドラマだったと思う。
心から感動した。
さて、
ところでこういう記事を読んで、この国が本当に自由な国だと思えるのだろうか。恐ろしい国だ。個人の葬式を税金で払って、なおかつほとんど黒塗りとは。
まさに「黒塗り社会」
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