「シモーヌ　フランスに最も愛された政治家」オリヴィエ・ダアン監督の三部作最後の作品だそうだ。


Simone, le voyage du siècle – Bande-Annonce officielle (VF)

とてつもないスケールの大きな映画だった。オリヴィエ・ダアン監督の過去作品に流れる格差や偏見や戦争というテーマはここでも貫かれる。そしてとてつもなく美しい映画。価値ある映画だと思う。この映画をそのまま見てもいいが、主人公のシモーヌ・ヴェイユとその家族について少しだけ予備知識があると、より映画が面白くなる。
彼女の壮絶な人生は映画の中で余るほど紹介されており、アウシュビッツから死の行進をするシーンは胸が痛くなる。
彼女の父親が愛国者で、ドイツの侵攻で国家に裏切られることを承知で信念を貫いたことに対立し、女性として自らの生きる力を家族に注いだ人生は、いわばバランスを維持することへの腐心だったのではなかろうか。世俗主義をもって、どこかの政党に偏ることなく、バランスを維持できたことで、反対意見を持つ政治家からも支持されたと考えるべきではなかろうか。国家が傲慢になればそれに抵抗し、大きな決断をする際にはそれぞれの意見を尊重する。分断する社会にあって、こういう人物を見直すことに大きな価値を感じる。

ちなみに劇場はなんと満席だった。

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