問題はロシアより、むしろアメリカだ④ 「アメリカの凋落」

第4章 アメリカの凋落

「アメリカは世界の人々の労働に寄生して生きている」

「この世界からアメリカという勢力がなくなれば、より美しい平和な世界が現れるだろう」

この対談は、このことを伝えるために存在する。そしてこのことを前提に、今後の世界が5つのファクターで左右されるであろうことをトッド氏は予言している。

ロシア   人口減少に入る5年以内に決着したい

中国    アジアで起こる戦争を回避できている

アメリカ  最も不確実

ポーランド 次の対ロシア戦争

ドイツ   アメリカはドイツをロシアから離したい

初めて知ることはポーランドとドイツのことだ。特にドイツ。ドイツは確かに前首相のメルケルとプーチンの蜜月時代があった。東ドイツ出身で資本論を学んだメルケルは、ロシア語も堪能で、プーチンと通訳なしで会話できた。ところが2022年、ドイツやデンマークなどがロシアから供給を受けているパイプライン「ノルドストリーム」が爆破されたことで混乱が広がっている。

ところがトッド氏は「これはアメリカの仕業に間違いない」と断言する。このことからも苦し紛れで凋落傾向のアメリカに、日本をはじめとする西側諸国が引きずられることにドッド氏は強く懸念を示している。


第5章 多様化していく世界と我々

ロシア  → 「すみ分け」のビジョン=価値観を押し付けない

アメリカ → 価値観を押し付ける国(世界の警察など)

サミュエル・ハンチントンの名著「文明の衝突」をもとに、トッド氏のこの対談によれば、日本は必然的に中国に寄っていくという。思考停止状態のまま、なんでもアメリカに隷属するのは危険で、世界の趨勢からしても、中国と対立構造を設けることになんの価値もない。


さらに、中国がかねてから投資をしてきた「グローバルサウス」といわれる南半球の途上国が発展すれば、瞬く間にアメリカは凋落するであろうとも言われている。


池上彰さんがとても興味深い発言をされていて、アメリカの一極集中や新自由主義が広がったことによって世界が混乱していることを見ると、実は冷戦時代はバランスが取れていたと言えないか、と語っている。


もちろん時代とともに世界は揺れ動く。しかしその揺れのどちらかに重心を置けばバランスが崩れてしまう。この対談で様々な先入観がかき消され学ぶことが多かったが、すくなくともウクライナ戦争が「ロシアの悪あがき」ではなく、むしろ「アメリカの凋落」を意味するものだと認識することができた。とても画期的な本だった。



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