#ダリチョコ の映画とグルメ

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#新宿末廣亭 令和五年十一月中席 #神田松鯉 主任

だいぶ長い記事になるがご容赦いただきたい。



昨日、意を決して新宿末廣亭まで落語を聴きに行くことにした。混雑が予想されたので、昼の部の最後、桂歌春師匠の落語から席につく。ネタは「紙入れ」だったかな。



神田伯山先生人気もあるが、人間国宝で伯山先生の師匠でもある神田松鯉先生が主任の長講一席「赤穂浪士」のシリーズが聞けるとあって、寄席は超満員。この度は2階席で過ごすことになった。



開口一番、前座の桂幸路さんの「寿限無」から始まり、松鯉先生の弟子で二ツ目の神田鯉花さんの「柳沢昇進録」。そして国分健二さんの関西弁による漫談では、なんと月光仮面のフルコーラスが披露される。月光仮面が放送されてから60年以上過ぎたらしい。


三遊亭愛楽の「親子酒」を新作風にアレンジ。親子の話しではなく、奥さんにうまくお酌をしてもらうシーンを切り取って盛り上げる。YouTubeでも聞くことができるが、奥さんに昭和歌謡(演歌)を歌わせるというとてつもない展開。


続いて玉川太福の浪曲「地べたの二人・おかず交換」。場内大爆笑。50代と30代のサラリーマンが繰り出す弁当談義。新しい弁当箱を買ってその値段がいくらか聞いてほしい先輩と、それに興味がない後輩のやりとりだけで寄席が大爆笑に包まれる。恐るべし大福先生。


ぴろきの慢談のあと、春風亭昇也は短い寄席の時間に「たけのこ」と「庭蟹」というふたつのネタを凝縮させて披露。隣の屋敷から飛び出したたけのこを食卓に出したら、あるじから色々言われて行ったり来たりして、挙げ句隣にたけのこの皮をばらまいて隣の主人から「可哀いや(皮いや)」と言われる噺と、洒落の効かない旦那と番頭のやりとりの「庭蟹」。


桂南なんは、まくらなしでいきなり「尻餅」。女房の尻をはたいて餅つきの音真似をする貧乏長屋の亭主。女房が最後に「おこわにしてくれ」でさげる。餅ではなくおこわというのは、亭主が親方に餅屋の声色(こわいろ)で餅つきをするのとかけている。


檜山うめ吉さんの小唄と踊り。目の保養だ。「並木駒形」、「山谷の小舟」、「きりぎすは/羽で鳴くかよ/蝉や腹で鳴く/わたしゃ/あなたの胸で泣く」に加え、大技の「お清しゃもじ」。お清がただ台所でしゃもじを探す、というだけの話しなのだが、なんとも三味線の音色とともに伝わる光景がのどかで微笑ましく可愛らしい。江戸情緒があふれている。ちなみにうめ吉さんの御髪は地毛だそうだ。かつらじゃない。



仲入り前、この日の多くのお客さんのお目当てであろう神田伯山の『天保六花撰〜玉子の強請』。河内山宗俊が身投げしようとする使用人を見かけて、あくどい主人に仕返しをする話し。店に出向いて番頭の眼の前で卵を盗み、盗人呼ばわりされた宗俊がゆでたまごを投げつけて驚かせ、身投げしようとした使用人のあるじから100両巻き上げる。ときの老中を脅迫して金を巻き上げるなど、悪名高き人物のようだが、ここでは身投げしようとする使用人を助けるヒーローとして描かれる。やはり伯山はうまい。悪役を善人に仕立てる切り口もさることながら、笑いを交えて観客を飽きさせない演出。




これでだけ人気がありながら、決して奢ることなく、寄席のあと店先で寒空の夜、自らグッズ販売をかって出る。伯山クラスの人気者なら、わざわざ寄席に出なくても、単独で集客する力があるはずだが、寄席や協会の縁を大切にする人柄もまた魅力だ。すごい人物だ。



このあと師匠である神田松鯉先生の講談をしっかり観察して、その凄さをSNSで短く紹介する。気配りもすごい。


中入り後、坂本頼光先生の「弥次喜多 尊王の巻」。これはそのまま動画で見ることができる。映画評「弥次喜多・尊王の巻」



弥次喜多の話しだが、旅道中ではなく、京都に居を構えるふたりがあることから反徳川とされ追われる身となるが、ふたりの代わりに武士が捕らえられ、それを助けに行くというどたばたコメディ。牢屋の山嵐の馬鹿力も笑いのたねだ。


柳亭小痴楽の「磯の鮑(あわび)」は、女郎買いに言ったことのない与太郎が騙されて吉原に向かう話しだが、小痴楽師匠の大胆アレンジ。与太郎が吉原大門をくぐってからの展開は、小痴楽師匠のキレのあるアクションで盛り上がる。座布団が定位置から飛ばされるほどのアクション。”磯の鮑(あわび)の片思い”というタイトルのくだりと、おいらんの涙が伊豆のわさびにかけたサゲが味わい深い。さすがの小痴楽師匠だ。


立川談幸の「元犬」は、人になりたかった白い犬が念願かなって人になったものの、犬の頃のクセが抜けずに混乱するはなし。談志唯一の内弟子と言われる談幸師匠の落語を初めて聞く。


そしてボンボンブラザースさんの曲芸というかパントマイムに近い芸に圧倒される。細い紙を鼻の上に乗せ、それが何度も落ちて失敗する。と思いきや、ゆらゆら揺れるその紙を鼻の上に乗せたまま、なんと客席まで下りて、さらに舞台の上るというすごい曲芸を見せてくれる。お客さんを引き込んで帽子を投げてかぶらせるやりとりで場内大爆笑。



最後はいよいよ神田松鯉先生登場。
夜の部が終わったあと、二ツ目さんの深夜寄せがあるらしく、人間国宝松鯉先生自ら宣伝するという親切ぶり。
『赤穂義士外伝〜天野屋利兵衛』は、近江商人の利兵衛が、大石内蔵助のために討ち入りの武器を作り江戸に送りつけるがたれこみでそれが役人にばれて厳しい尋問を受けるが口を割らない。それを


天野屋利兵衛は男でござります


という名言で伝説となって講談で語り継がれてきたはなしだ。厳しい拷問で子供まで犠牲にされるところだが、妻の告白で調べが止まる。この話しのいいところは、拷問する松野河内守もまた利兵衛や赤穂浪士の意思を察して、最後は粋なはからいをするあたりが胸を締め付ける。この人情深い話しの外形に、何か意味があるのではないかと察する。人間国宝の迫力に圧倒され、またも素晴らしいいちにちを寄席で過ごさせてもらった。


ありがたや、ありがたや・・・



この日の2階席には、母親と小学生の二人連れがいて、ぴろきさんのネタに大爆笑し、松鯉先生の講談に拍手を送っていて微笑ましかった。いつぞや正月の顔見世興行にも小さなお子さんが来られていて、舞台から声をかけられるというシーンがあった。小さい頃から落語や講談を聞いて想像力を豊かにするのはいいことだと思う。


さて、ここから短く今回の寄席を自らの考えに強引に引き寄せる。
伯山先生の河内山宗俊が、あるじから騙された使用人に代わって金を強要する話しと、坂本頼光がいわれのない罪で牢獄に縛られた武士を弥次喜多が助ける話し、そして松鯉先生の講談に潜む拷問やたれこみ。松鯉先生は「ついこの間まで拷問があったんですよ。といっても戦前ですけどね。」というひとことに過敏に反応する。


もはやこの国は見えない拷問に相当するような不自由さと抑圧に苛まれているように感じる。芸人は古典芸能に直接的な政治批判を重ねようとしないが、彼らの本音も聞かせてほしい。かつて落語や慢談のまくらでは、露骨に政治家をネタにして、ちくりと批判するようなときもあった。露骨だったのが談志だろう。


残念ながら、彼らも一定の国庫から支援されて仕事をしているので、昨今ではあまり露骨なことは言えないが、落語や講談、そしてこの日の無声映画そのものに、権力へ過敏に反応するつくり手の意思が示されているではないか。


だからといって、観客をとりこにする芸人の先生方や師匠に何かを求めるつもりはないが、社会はもっと政治に批判的でもいいのではないか。あるいは傲慢な姿勢に強く批判的でもいいのではないかとも思う。


という与太話で今日は終わる。
それにしても楽しいいちにちを過ごさせてもらって、寄席やスタッフの皆さんを含め感謝したいと思う。


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