#枯れ葉 アキ・カウリスマキ監督 「生活費、GDP」
劇場はほぼ満席だった。
カウリスマキ監督が日本で人気なのは、小津安二郎監督の影響もあるかもしれないが、何よりコミカルで淡々とした表現の独自性(原色を背景とした表現など)が人気の理由なのではなかろうか。(「花束みたいな恋をした」でもカウリスマキ作品が使われている。)
主人公は「トーベ」でムーミンの過激な原作者を演じたアルマ・ポウスティさん。この映画では極力表情を抑えて、微妙な表現をされていた。来日してたくさんのインタビューに応じていたようだ。
主人公の女性が家で大きなラジオをつけると必ずウクライナ戦争の被害などが報道される。言うまでもなくこの映画は戦争を扱うドラマだ。しかし戦争を全面に押し出すのではなく、フィンランドで疎外された労働者階級の不思議でおかしな日常生活を淡々と描くことで、映画とは全く関係のない戦争を浮き彫りにする仕組みになっている。カウリスマキ作品なので、当然に堅苦しい表現はない。劇場はクスクス笑いが広がってゆく。
もうひとつ重要なことがある。
この映画で、カウリスマキ監督は”ある事”について極めて強く表現しようとしている。映画のいたるところに出てくる仕掛けに目を奪われる。主人公が飼うことになる殺処分になるはずの犬にもカウリスマキの意思が込められている。そのことにフォーカスすると、この映画をより楽しむことができる。映画を愛する者ならなお楽しめるのではないか。
素晴らしい映画だ。
★
いずれにしてもどんどん下がってゆく。