ビヨンド・ユートピア脱北 マドレーヌ・ギャビン監督 「諸悪の根源」
劇場は朝からかなり熱気にあふれていた。年配の方を中心に女性のお客さんが多い印象だったが、ここに来られているお客さんがもし朝鮮半島と関係のある方だとしたら、日本でこの映画をともに鑑賞することの価値を強く感じる。とても重くそして価値のある映画だった。
.#BeyondUtopia’s Madeleine Gavin (Director/Editor) has been nominated for a DGA Award for ‘Outstanding Directorial Achievement in Documentary’!
Thank you to @directorsguild for the amazing honor! pic.twitter.com/C7I9vW5Mho
— Beyond Utopia (@BeyondUtopiaDoc)
映画はとてつもなくサスペンスフルで、北朝鮮の実情を並行して描きながら、脱北の成功と失敗を示す。しかしそれだけではない。脱北に成功した家族の高齢の祖母へのインタビューを最後に示す。命からがら、数カ国の国境を越え数千キロの距離の先に獲得した自由の場で、この祖母は北朝鮮の総書記を敬うことをやめない。同じことがふたりの孫(少女)にも言える。生死の境を生き延びた80歳を超える老人が、北朝鮮を敬う・・・。
このことはほかの脱北者のインタビューでも語られる。問題がなければそのまま北朝鮮にいたと断言する方もいる。この映画では、北朝鮮の惨憺たる実情を言葉でつないでいるが、それは我々が思うことであって、当事者にとってはその国で生きることが全てなのだ。思えばヤン・ヨンヒ監督の「かぞくのくに」でもそのことは示されている。
この部分に強い衝撃を受ける。
これを逆説的に考えると、例えば日本にいたからといって北朝鮮のような洗脳状態が存在しないと言えるだろうか。ジャニーズ問題も吉本問題も全て政治につながる問題だが、彼らが帰属する組織が北朝鮮と違うと断言できるのだろうか。もっと広く見れば、この国がアメリカの支配から本当に自立していると言えるだろうかと考える。
ギャビン監督は冷静だ。彼女は朝鮮半島問題のきっかけが日本の軍事侵攻だったことをはっきりと示している。この映画の脱北者やヤン・ヨンヒ監督作品の人々、大島渚監督の「忘れられた皇軍」など一連の作品、森達也監督の「福田村事件」など、日本における朝鮮半島を描く映画だけでも、「ビヨンド・ユートピア脱北」へ訴求するテーマが山ほど織り重なるように見えた。
ユートピア(理想郷)というテーマが、昨今の数々の映画、例えばソロゴィエン監督の「理想郷」などにも重なり合うことにこの時代の傾向が見えてくる。戦争や対立、分断などのボーダーが様々な場所でカタチを変えて存在することを強く認識する映画だった。
手に汗握る映画に、心から感動した。そしてキム牧師の勇気と寛大なる姿勢にも。
Beyond Utopia - Official Trailer
映画「ビヨンド・ユートピア脱北」救出支援のキム・ソンウン牧師来日記者会見 | クリスチャン新聞オンライン
カメラが追った命がけの脱北ミッション…米国ドキュメンタリー撮影に応じた韓国牧師「KーPOPが金正恩政権を脅かす」 写真枚 国際ニュース:AFPBB News
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「諸悪の根源」
週刊誌などの記事もあながち捨て置くことができない場合があるらしい。
伊東光晴先生がずっと前から警鐘を鳴らしてきたことが、本人の死によってあぶりだされるとはいかがなものだろう。もしまだ生きていたら・・・
「諸悪の根源がどこにあったか」よくわかる良記事。検察も読んでほしいものですよねえ!(読んでるか)
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