#ウディ・アレンの 6つの危ない物語
御年88歳のウディ・アレンが2016年に配信のみで展開したドラマ。8年前のドラマだが、アレン自ら主演している。
作家の夫とカウンセラーの妻という夫婦の家に、若くて美人のテロリストが潜入してきて、夫婦のまわりの関係者を巻き込んで大混乱させる、というすごい物語。あまりにも美しくて若い女性のテロリストの魅力に全員が翻弄されてゆく。
ときはベトナム戦争真っ盛りの1960年代後半。テレビでデモやテロ活動が報道され、新聞で指名手配されている女性がある夜、この家にやってきて好き勝手なことを始める。保守的な夫(ウディ・アレン)は、この女性を追い出そうとするが、妻はこの女性の言うことに惹かれて彼女を助けようとする。それだけでなく、妻は自分の読書友達やカウンセリングをする患者、親戚などを巻き込んで、彼女の主張するマルクスや毛沢東の思想を拡散する。
混乱に混乱が重なって、最終話では、この家の中がとんでもない大混乱に陥ってゆく。
ウディ・アレンの面白さはただひとつ。誰もお互いのことを気にしていないという点だろう。だから登場人物はそれぞれ勝手なことを言って誰もお互いの話しをまともに聞いていない。聞いていないものたちが勝手なことを言うので、話しはまったくまとまらない。第6話はまさにアレンらしい混乱のシーンとなる。まるでフェリーニの「8 1/2」を思わせる。
ウディ・アレンというと先ごろ鑑賞した作品をはじめ、ずっと映画館で鑑賞しているが、そのいずれもがどこかホラー映画のような心理描写が示されている。
どのドラマも男女の言い争いがドラマで繰り返されるのだが、こういうシーンを何度も重ねることでお互いの噛み合わない本音が見えてくる。ウディ・アレンの映画を見ていると、人は誰も信用も信頼もできない愚かな動物であることを気づかせてくれる。そしてそれが時として犯罪行為に及ぶこともある。
このドラマの危なさ(クライシス)とは、まさに現代の危機。ベトナム戦争当時のことを描きつつ、アメリカという国がどんどん保守的で分断を露呈しようとしていることをにじませる。
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