#コール・ジェーン フィリス・ナジー監督
「コール・ジェーン」
Call Jane | Official Trailer | In Theaters October 28
監督のフィリス・ナジーさんは、パトリシア・ハイスミスの「キャロル」を脚色した方で61歳。これが初めての監督作品となる。
まず、
冒頭のシーンが素晴らしい。ワンカットで主人公の後姿をカメラが追う。彼女がパーティ会場と思われるホテルの階段をゆっくりと下り、会場のドアを開けて夫を遠くから認めてから、その先の回転ドアを開いて外に出ると、機動隊がホテルを包囲している。機動隊が彼女を止めてホテルの中へ戻し入れると、外で過激派と思しき声が聞こえ、一気にドアの外で戦闘が始まる。緊迫するこのシーンひとつで、このドラマの行く先が示される。素晴らしいワンカット。このゆったりとしたリズムは「キャロル」を思わせ、ガラス1枚隔てた外で起こる暴動は「エンパイア・オブ・ライト」を思い出す。
もうひとつ。
主人公が闇医者のドアをくぐり、その怪しさに耐えかねて、逃げるように外に出ると雨が降る。明るい陽射しと裏腹の通り雨の中、バス停の時刻表を見る先に「ジェーン」の電話番号が・・・。この美しいシーンもまた印象的。
この映画は、ファッションも画像も当時のままを再現しようとしている。特にベトナム戦争に反対する意思などは、この映画の前に偶然鑑賞したウディ・アレンの映画にも似る。
これは偶然なのだろうか。
我々が目の当たりにしている当時の現実は、それほど遠くない歴史である。あれほど社会が狂い始めた時代、映画の中でニクソンが再選される場面などは、「大統領の陰謀」でも明らかにされた政治をめぐる問題でもあろう。
女性の身体に関わる権利が、いままた阻害されようとする時代に、この映画の意味を深く考えざるを得ない。
町山智浩『コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話』を語る | miyearnZZ Labo
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