The Journy 松任谷由実 後編 「集団心理は海のよう」



新人乗組員の日記も最後に近づくと、いよいよクライマックスが近づく。50年のキャリアをぶつけた航海も終盤に向かうと、ユーミンのヒットメドレーが続く。

きらめく海に捨てよう後悔日誌

はるかな船旅のあいだにつづった

哀しみは

この航海が始まったときからこの曲がくることはわかっていた。アルバム「COBALT HOUR」(1975年)から「航海日誌」を最後にステージは終わる。この時アリーナ全体が青い光に照らされ、それはまるで海原のようだ。ユーミンは最後のMCでこの海のようなうねりの中で集団心理はまるで海のよう。どうやってもコントロール不能になってしまう。けれど私は人の知性を信じたい。」と言った。この意味は果たして「航海日誌」を”後悔”に重ねることで、船の進路を誤ってしまったこの社会をぼんやりと示しているように思えるがどうだろう。それでもユーミンは前を向いて進むと言う。

コントロール不能の社会、それは二分法によって全てを善悪で白黒させた挙句、そのどちらかを踏みつぶすような強権。かつて世界を争いの渦に巻き込んだことと同じ道を歩もうとするネット社会。SNSもテレビも政治も何もかも同じ方向へと強引に突き進もうとするこの状態を、ユーミンはアンコールで「守ってあげたい」「やさしさに包まれたなら」で会場をまさに包み込んでゆく。めったにテレビ出演しないユーミンが、ザ・ベストテンに「守ってあげたい」で出演したのは1981年。ユーミン当時27歳。

守ってあげたい

あなたを苦しめる全てのことから


これをユーミンのメッセージとして受け止めよう。そして世の中の全てのことを疑い、本当の真実が見えるまで見極めよう。集団心理という恐ろしい現実で自分を失うことがないよう努めよう。




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