ニューロマンサー ウィリアム・ギブスン著 「馬糞の川流れ」
- ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)
- 早川書房
- Digital Ebook Purchas
いつだったか同窓会があって、その時話題になった本を読もうと決意したのだ。
ところがなんというかあまりにも複雑で難しくて、しかも中古本をネットで買ったら文字が小さくて、とにかく読み終えるのにとても苦労した。SF小説である。全く知らない世界だった。
著者のウィリアム・ギブスンはサイバーパンクというジャンルの代表的な作家らしく、ギブスンのキャリアそのものを象徴するようなドラマが小説でも展開される。おそらくだが「マトリックス」の原型となったものと思われる。ギブスン自身がヒッピー・ムーブメントの中でサブカルチャーを生きてきたことがこのドラマを構築している可能性がある。
すじがきを簡単に説明することはできないが、物語は千葉市(チバシティ)から始まる。
ここに幽閉されていたハッカーのケイス(24歳)が主人公で、財閥(ザイバツ)とヤクザが経済を牛耳る近未来に、ケイスがコンピューター複合体への潜入を命じられ、社会を支配するニューロマンサーと対決するという話しだ。
登場人物が多く、次々と場面設定が変化する。
ジャックイン、ジャックアウトという言葉が交錯するが、これはまさに「マトリックス」の世界で、電脳社会をあちこち行き来する仕組みだ。翻訳の意図もあるだろうが、途中で登場する人物がなぜか三河弁をしゃべったり、会話がユニークだ。
冬寂(ウィンターミュート)というAIはニューロマンサーの脳の半分を支配しているらしく、誰かの命令によって次々と人間を殺してゆく。そしてケイスと彼のパートナーたちを追い詰め、最後は迷光(ストレイライト)を駆け巡り、壮絶な戦いが繰り返される。
この小説が書かれた1984年には、すでにリドリー・スコットの「ブレードランナー」が公開されており、著者のギブスンが小説執筆中にこの映画が公開され、彼のイマジネーションにショックを与えた可能性があるらしい。さらに、当時の日本を舞台にしているのは、日本が近未来都市としてイメージされる時代であったことが注目される。同じことが「ブレードランナー」にもいえる。
まだインターネットが普及するずっと前に、ネット社会の中で戦いが繰り返される情景は、まさに現代を表出させている。巨大な組織に立ち向かうハッカーのケイスはまるでドン・キホーテのようだ。そしてAIが自ら社会を支配するのは「2001年宇宙の旅」以降、多くのSF小説や映画の中で警告されてきたことだ。このドラマで示されていることは、現実となってはいないのだが、ネット社会が個人を攻撃する管理社会となってゆくさまは、恐ろしさを覚える。それはどんな社会でも組織が個人を拘束し管理して弾圧する可能性があることを暗示しているのではなかろうか。
★
元首相はカンカンに怒っているらしい。しかしお門違いではないだろうか。
派閥解散に追い込まれた #安倍派。さらに #自民党 執行部は安倍派の幹部7人を離党させる方針だそう。党執行部のこうした動きに「#安倍派5人衆」の後ろ盾だった #森喜朗 元首相はカンカンになっているようです。
https://t.co/KDa8ydgWCf #日刊ゲンダイDIGITAL— 日刊ゲンダイDIGITAL (@nikkan_gendai)
どうでもいい記事なのだが、こういう記事で自民党が宣伝される効果があるので残念だ。愚か者より、正しいことをしようとしている政党や政治家の報道を大きくしてほしい。この党の話題を記事にしてほしくないと思えてしまう。
はたして麻生氏が安倍派5人衆の“救済”に積極的に動くのかどうか。5人衆が離党処分となっても、麻生氏はほとんど困らないからだ。むしろ、幹部を失った安倍派が「馬糞の川流れ」のようにバラバラになった方が好都合ということもある。
