#ダリチョコ の映画とグルメ

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被害者が容疑者となるとき ナンシー・シュワルツマン監督


ネットフリックスオリジナルで配信されているこの映画を見た。ちょっと長くなる。



人権活動家のシュワルツマン監督がジャーナリストのレイチェルを中心に示したレイプ被害を受けた女性のことを描く。昨今、日本の芸能界からも次々にMe Too運動のように暴露されていることと大いに重なる。


主に被害を受けたふたりの女性を取材して作られているが、もうひとりの女性メーガン・ロンディーニはこのことを苦にして自殺している。そしてこの事実がアメリカだけでも氷山の一角であることが紹介される。


レイプされた女性が警察に届け出ると、巧妙に誘導されて、被害者が容疑者として逮捕され刑務所に入れられるという事実。これはレイプ事件に限らずよく聞く話しだ。



元警察官の男性を登場させて、なぜこのようなことが起きるのか?をレイチェルが尋ねると「検挙率を上げるためさ」ということらしい。被害者を加害者にすれば一石二鳥。要するに警察も所詮数字を上げるための仕事しかしていないということのようだ。ある意味で新自由主義の成れの果て。彼らは真実だとか正義など、どうでもいいのだ。


この類のドキュメンタリーで問題となるのは、片方の側だけ取材して一方的に報道する危険である。誤解を恐れずに言うと、この映画に出てくる被害者2名はいずれもふくよかな体型だ。そんな彼女たちが被害届をしてきたとして、偽証だとしてしまえば、世間もそれを信じるであろうことを言わんとしているのではないか。これはことによると人種の問題にも訴求することではないだろうか。黒人やアジア系の移民らを虐げようとする意識は、2017年、トランプ氏が大統領に選ばれて以降、強まっているように感じる。


レイチェルはとても冷静に、疑わしい捜査する側の警察官らにも取材を申し入れ、公平に取り扱おうと努める。レイチェル本人も、被害者に寄りすぎないように注意すると言っている。


もともと彼女がジャーナリストになろうとするきっかけは、地元のローカルテレビなどで取材するうちに、報道することで改善が見えることが楽しくなったからだ。しかし、そんなレイチェルがこの大きな事件を総括して最後に、「ジャーナリズムは対象者全員を気分悪くさせるものだ」という言葉で締めくくる。That is Journalism, babyは本音だろう。


例えば大島新監督の「香川1区」という映画などが、特定の候補者の側から作られてしまうことの問題も同じだろう。テレビでも映画でも、問題を提起するには公平な姿勢が求められる。特に政治やこの映画のような権力の側を相手とする場合、権力側が取材に応じないことでバランスを欠いてしまう懸念が内在する。


そしてこれらの傾向が大いにときの政治や世論などに刺激されることも問題だろう。思い起こせばトランプが政権を獲得する前、オバマ氏が大統領だった頃は多くの黒人迫害を暴露する映画、「それでも夜は明ける」や「デトロイト」あるいは「フルートベール駅で」などの作品が作られたが、政権交代後、こうした傾向が途絶えてゆく。その代わりに「コーダ 愛のうた」など、間接的に表現の不自由を暗示するような作品が趨勢を背負う傾向に向かうわけだが、いずれにしても言論を維持するには公平な視線が必要になる。それはときの政治や世論に惑わされない冷静な視線という意味である。


元警察官がこの映画に協力して、警察側の視点から証言するのだが、レイチェルがこの人物に「なぜ協力するのか?」と尋ねると、彼はその理由を言葉を選びながら吐露しはじめる。ここはこの映画で最も感動的でリアルな部分だったと思う。


人には誰にも言えない傷や秘密があるだろう。秘密を秘密のまま内に留めておくことは、そのことが権力に弾圧され、被害者の立場が逆転して容疑者や加害者として曲げられてゆく恐怖を、この映画は丁寧に描いている。素晴らしい映画だった。




町山智浩 映画『コンクリート・ユートピア』『被害者が容疑者となるとき』『ガザ 素顔の日常』



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