問題はロシアより、むしろアメリカだ②　「終わらない戦争」

2023/10/03 12:00

この本のサブタイトルは「第三次世界大戦に突入した世界」だ。
第二次世界大戦が終わってしばらくしてから生まれた我々昭和中期生まれの者たちは、戦争に対する意識が薄いうえに、詰込み教育で考える力がない。「第三次世界大戦」と聞いても実感がないのは恐ろしいことだ。

第２章　終わらない戦争

エマニュエル・トッド氏は、すでに第三次世界大戦は経済面をきっかけに始まっていると語る。

生産＜消費　→　貿易赤字　→　米・英・仏
生産＞消費　→　貿易黒字　→　露・中・印・サウジなど

借金してでも消費する西側と、原油国などエネルギーのサプライヤーとして東側という勢力図で比較すれば、人口比に照らしても明らかにロシア支持派が世界の趨勢であることは明らかだ。日本を含め、西側諸国がどんなにあがいてもこの大きな勢力関係に抗うことは不可能だ。

ウクライナ戦争はアメリカの代理戦争であり、かつてベトナムやイラクで展開したやりかたと同じ方法で戦争を演出している。ウクライナはあくまでも米英の道具でしかない。もし米英の生産力が高ければ、この戦争はとっくに終結していなければならないはずなのに「終わらない戦争」は、ロシアが攻めあぐねているというよりも、アメリカの生産力が落ちている、と見るべきだという。しかもアメリカは、かねてから自国内で戦争をしたことがない。自分たちは傷つくことなく、他国で戦争をすることで、兵器需要を高めているというわけだ。実はこのことに多くの国が気づき始めているという説もある。

冷戦構造が崩壊して、アメリカの一極集中が退行してゆくだけで、ロシアや中国が必ずしも覇権を奪おうとしているわけではない。ロシアと中国にとってはむしろ「終わらない戦争」が望ましいことで、戦争が継続することに意義があるそうだ。