「ロスト・キング　５００年越しの運命」

ほぼ満席だった。

まずオープニング・クレジットがすごくいい。ひと昔前のデザインと高揚する音楽はサスペンス映画の趣きだ。主人公のサリー・ホーキンスは知的で素晴らしい女優だし、監督のスティーブン・スピアーズは多くのイギリス王室を舞台とした名作を作り上げてきた。しかし今回驚くのは、製作と脚本に主人公の前夫役を演じるスティーブ・クーガンが関与している点だ。彼のささやかな存在がどれだけこの映画に勇気を与えたことだろう。

リチャード３世のことすらよく知らない立場であれこれここで言及することははばかられるが、実在のフィリッパ・ラングレーが本当に成し遂げたことであることに圧倒される。まさに神がかり的な意思と能力でリチャード３世を復権させた。ここで恐ろしいことは、歴史は勝者の立場でしか書かれないということだ。

その意味で、英国王室はリチャード３世の復権を英断するが、実はこの映画には隠れたもうひとつのエピソードが隠れている。フィリッパが病を押して、しかも自らの財産をはたいてまでこだわった歴史的事実を揺さぶろうとする者たちのことが描かれる。彼女は戦い続けた。

これは大きな圧力に全てが押しつぶされ、美味しいとこどりをされる小さな力を大きく見せる物語でもある。

町山智浩『ロスト・キング 500年越しの運命』を語る | miyearnZZ Labo

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