#ダリチョコ の映画とグルメ

しょーもないブログです。I am stupid anytime.

#日没 #桐野夏生 「インボイス」


ネタバレに注意。しょうもなブログなので、読まないほうがいいかもしれない。少し長い記事になるかもしれない。桐野夏生さんの「日没」。


去年の11月頃、どこかの本屋で衝動買いして一気読みした本。桐野夏生作品と初めて接する。「OUT」と「魂萌え!」は映画化されていて鑑賞している。
今回の「日没」は過去の明るい女性というキャラから少し離れ、エンタメ小説家という主人公をおそらくだが自分(桐野夏生さん)自身に重ねて描いているのではないかと思わせる。


主人公は「マッツ夢井」


ドラマの始まりで、主人公の姿勢が示される。この部分だけ読んで小説の中に入り込む。作家の立場を明確に示す書き出しだ。


私は基本的に世の中の動きに興味がない。というのも、絶望しているからだ。(略)すべてがお国優先で人はどんどん自由を明け渡している。


このひとことで、この小説の全てを示している。このあと主人公になぞの「召喚状」が届き、逃げ場のない断崖絶壁の際に建つ診療所に隔離され、マッツ夢井は思想統制されてゆく、という話しだ。


当初マッツ夢井は、この七福神浜診療所という場所で徹底的に反抗するが、都度減点を食らい拘束期間が伸びてゆく。所長の多田が言う。


表現は自由ですけどね、何もかもが自由というわけじゃありませんでしょう。そうでなければ社会はすべてが野放しになってしまう。


このドラマは「表現の自由」を巡る議論が重ねられるシーンがいくつかある。この作品が作られたきっかけがなにか?ということを幅広く想像させる。実は、沼野充義氏による「夜明けはいつくるか?」という解説の中にも出てくるのだが、2019年の「あいちトリエンナーレ」は、この作品にそれなりの影響を及ぼしている可能性がある。桐野夏生さんと武田砂鉄さんの対談でも、この国を最悪の状態に貶めた政権時に提出された恐ろしい法案は、この作品が連載される間、同時進行的に成立してゆく。


牢獄のような生活に封じ込められたマッツ夢井は、思想転向のきっかけとして「母とカレーライス」という作文を書き始める。暴力を振るう父親と別れた母親が作ったカレーが美味しくて、弟が「お父さんにも食べさせたいね。」と空気を読まずにこぼした言葉に母親が「そうだね」と応じる話し。この話しはこの後、母親を失った姉弟が行き場を失い貧困の中で親戚をたらい回しにされてゆく悲劇となり、最後はこの怒りと憎しみを自分たちを捨てた父親に向けるという話しになる。


診療所の単調な生活に慣れようとするマッツだが、後半に混乱が生じて、地下にある独房のような場所に連れて行かれて拘束される。まるで「羊たちの沈黙」のレクター教授のように。


クライマックスでは、療養所長の多田とマッツによる激論となる。


マッツ「作品は自由だ。人間の心が自由だからだ。国家権力がそれを禁じてはいけない。」

多田「ヘイトスピーチはどうなんだ。」

マッツ「ヘイトは作品ではない。」と言い返す。


これは、あとの対談にも出てくるのだが、最近、百田尚樹と政治活動をしている地方都市の愚かな市長の発言が混乱を呼んだことと重ねている。


ドラマはここから色々あって最後は衝撃のラストへと向かう・・・
(ラストは連載時と異なり、文庫化されたとき15行加えられたらしい。)



(対談には三原じゅん子氏や杉田水脈氏も話題にされている。)


ショッキングな作品だ。桐野夏生さんのこれまでのコミカルな印象は薄れ、オーウェルの「1984」やブラッドベリの「華氏451度」のような世界を現代日本に見事に当てはめる。


沼野充義さんの解説にあるが、例えばかつてロシア文学は、表現の自由を賭けて命がけで勝ち取るものだったが、日本はもともと与えられた環境で生み出される作品で、売れることが目的となっている。売れる=金、というストラクチャーは、日本が戦後たどってきた歴史に重なる。読み手や権力に阿る作品が日本の小説だとすると、ロシア文学は厳しい弾圧の中で読者など無視して自分の責任において作られた作品だ。


日本はなにもかも世界から遅れをとる国になってしまったようだ。何もかも。それはかつて経済成長やバブルで獲得した価値から、失われた時代の現実は置き去りにされ、かつての輝かしい時代の幻想をいまもいだき続ける老害ともいうべき為政者などに支配されていることがその理由ではなかろうか。


表現の不自由展①  平和の少女像 - dalichoko


名古屋で見ることができなかった「表現の不自由」を国立の美術館に鑑賞しに行ったとき、街宣車と機動隊が集合するなど物々しい空気の中に悲しい歴史を目の当たりにした。これらの現実から目をそむけて、この国はこのまま進んでいいのだろうか。少なくとも諸外国からリスペクトされることはもうないだろうと思う。


最後に内田樹さんと「新しい戦前」を発刊した白井聡さんの書評を紹介する。苛烈な内容で真実味がある。白井さんはモーレツに怒っている!

この運命の普遍性について、われわれはいかなる楽観的幻想も持つべきでない。希望があるとすれば、それは、桐野夏生がまさに実践しているように、スターリンが述べたのとは逆の意味で、表現者が「人間の魂の技師」たることから逃げないことにおいてのみである。 




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