ラグビー質的観戦入門 廣瀬俊朗著
イングランド大会のあとに読んだ初心者向けラグビー本もあった。
今回は、昨年開催されたフランス大会を前に書かれた本で、本来なら開催前に読むべき本ではあるのだが、「ノーサイド・ゲーム」で俳優としても活躍されている、元日本代表キャプテン廣瀬俊朗さんの幅広い情報をこの本で学ぶことができる。すぐれものの1冊だ。
- ラグビー質的観戦入門 (角川新書)
- KADOKAWA
- 本
すでに昨年のフランス大会は終わっているため、この本と現実で若干の齟齬はあるが、なによりオールブラックスが初戦で敗れたゲームが極めて印象的だった。
この本のサブタイトルでもある「相手をバラバラにして孤立させる」というラグビーの本質に迫る内容で、少なからずフランスはオールブラックスを徹底的に研究し、地の利を活かしてPKなどの空中戦でオールブラックスを圧倒した。
第1章 意味、質
ラグビーを観戦するとき、いつも早めにスタジアムに入り、選手の練習風景をぼんやり眺めているのだが、ここでもすでに戦いが始まっているという。特にPKを任されている選手の調子に注目するとその日の試合の流れを予測できるようだ。
ラグビーは、一見選手のぶつかり合いとボールだけを追いかけてしまうが、それぞれのプレーに深い意味がある。相手のタックルを受けて倒れ込むのもかなりの訓練と工夫がいるらしい。
第2章 アスリート
ラグビーを見ていていつも感動するのが多様性。背の小さい選手から大きな選手までが衝突しあい、ぞれぞれに高い意識と技量をもって戦い合う。SHやSOはつねにボールをコントロールする立場で目立つが、ほかの選手の存在によって、そのチームのカラーがわかるのだそうだ。
例えばFW3列を見れば、そのチームのストラクチャーがわかり、CTBを見ればそのチームの哲学がわかる。ストラクチャーと哲学というと、スポーツとは無縁のように感じるが、ラグビーの場合は厳しい規律の基づいて選手が役割を果たすスポーツなので、チーム構成の基礎となるストラクチャーと意思としての哲学は極めて重要だと言える。
先ごろシックス・ネイションズで、王者アイルランドを終了間際で倒したイングランドのマーカス・スミス選手(CTB)などがその一例だ。彼の哲学がこのチームを奮い立たせていることは間違いない。
第3章 観戦術
ラグビーでよく聞く「セイム・ピクチャー(同じ絵)」とは、まさに哲学を共有することに似ている。ラグビーは極めて知的なスポーツで、しかも瞬時に様々な状況判断を迫られるため、反射神経を研ぎ澄ます訓練が続けられているのだそうだ。
勝ち負けだけでなく、試合に挑む意義(大義)を常に共有することが求められる。そういう姿勢を観戦する側も見ておくといいらしい。
第4章と第5章ではフランス大会の見どころなどを紹介する。廣瀬俊朗さんは、フランス人マイペースでコントロールが聞きにくい国民性を意識しつつ、それを前提にチーム作りをするダイナミズムを紹介する。このチームは歴史的にスクラムへのこだわりが強いらしい。
第6章でジャパンへの思いを綴ったうえで、ラグビーの共通認識として。
品位、情熱、結束、規律、尊重
を掲げている。多様性の中で、自分の与えられた役割を最大限に発揮しチーム全体で連携することの美しさをこの本では紹介しているのだ。
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