腐蝕花壇 森村誠一
推理小説は、ノリがいいとまたたく間に読めてしまうから楽しい。森村誠一さんの小説をしばらくぶりに読ませて頂いたが、なんともドライブ感のある素晴らしい作品だった。
なんと1987年に上構された作品らしい。主人公は小説家。まるで森村誠一さん自身を重ねているようだ。途中で引退した刑事の家に小説家が訪ねるシーンがあって、その家にはずらりと小説家の作品が並んでいるというのがある。ファンとはそういうものだ。
殺人事件が連続して起きるのだが、殺された人物の中に政治家に囲われている元暴走族の女というのがいて、この女性に関する証言に「女性は強がりを言っても、結局誰かに専属したがっている。」というのがあって、なるほど時代はそういう時代だったような気もする。この殺された女性の運命は結局のところ男の手にかかっていた。
このドラマは政治の話しをダイレクトに突き刺している。大物政治家に貴法院隆道という人物が出てくるが、これは明らかに田中角栄をイメージさせる。軍需産業で請け負い、朝鮮半島の工事に取り掛かったところで終戦となり、どさくさに紛れて軍事予算を現金化して、その後政界の資金のために運用をはじめたことが書かれている。これは角栄が理化学研究所の資金を朝鮮半島で現金化したことと重なる。そしてこの人物は、子飼いの議員にバンバン資金を振る舞い、その見返りとして払い下げになった国有地を廉価で民営化させ、それを数倍、数十倍の価格で転売して利益を得るという手法もおそらく同じだ。不動産がらみで政界、あるいは政界を影で操るフィクサー、並びに豪族系の企業などはすべてこの方法で生き残ってきた。政治は汚い。
彼ら政治家を追い詰めるため、刑事たちは政治家の妻が名義を貸している銀座のクラブの取り調べのため政治家の妻に聞き込みする。この事件には海外の麻薬ルートなどもからむおおきな事件(「ナルコの神」にも重なる韓国ルートなど)でもあり、政治家に直接同行を求めるわけにもいかない。そのため外堀から埋める作戦に出るわけだ。しかしいつしか主犯格の俳優に行き着くものの、その先には大物政治家が存在し、その圧力に屈するかどうかという局面に陥る。権力を私物化する政治家のくだりは、今も昔も変わらない。先ごろ殺された政治家とその祖先もまた然りである。警察官僚がいかに政治家と密接な関係にあるか、ということは国民の安全を脅かす恐怖と表裏の関係にあることを示している。
地方で暴走族をしていた三人が偶然乗り合わせたタクシーに、たまたま置き忘れられた政治資金をして、彼ら三人はそれを「神様の思し召し」として山分けしようとする愚かさもまた切実だ。自分がこの小説を映画化するとしたらこれをタイトルとするかもしれない。チャップリンの数々の映画もよぎるような愚かさと欲望。実に面白かった。
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