#ハリウッド映画の終焉 ① #宇野維正 著 「ヒーロー映画がもたらす荒廃」
宇野維正さんのことをあまり存じ上げなかったが、You Tubeなどでも活躍されている方らしい。ロッキング・オン出身らしい。
- ハリウッド映画の終焉 (集英社新書)
- 集英社
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本著は、いかにも活況だと思っていたハリウッド映画界が、ストリーミングサービスなどの普及で製作本数が激減している現状を伝えながら、ここ数年の間にリリースされた映画を紹介している。世界の中心と言われるハリウッド映画の実情と、昨今の映画を紹介するというふたつのテーマに取り組んでいて面白い。
冒頭の部分で宇野さんは、昨今の映画が資本の集中(「富の集中」)により、格差が広がり、シリーズものの大型興行映画しか作られなくなったことを教えてくれる。
第1章 #Me Tooとキャンセルカルチャーの余波
Ⅰ プロミシング・ヤング・ウーマン 復讐の天使
ありがたいことに、この本で紹介されている作品は、自分もほとんど見ていて、それなりの理解があるので読んでいても実感が湧く。そして映画では示されなかった情報なども加わって、さらなる理解が広がるのもいい。ちなみにこの作品には”もうひとつのエンディング”、つまり最後のターゲット(男)の家に火をつけて男たちを見が殺しにする、というシーンも予定されたようだがそうならなかった。そうならなかったことを観客に示し、観客に考えてほしかったと監督のエメラルド・フィネルは考えたらしい。
エドガー・ライト監督の出世作と言われる「ベイビー・ドライバー」に、ケビン・スペイシーが出ていたことで、セクハラ問題に巻き込まれたことで、映画の内容ではなく別のところで評価がダウンしてしまったことを紹介し、この映画に出てくる”顔のない男たち”を象徴的に使い、映画のテーマを示そうとしている。時代を越えてタイムリープした主人公が巻き添えにあうのは、最後の犯人もまた、性的被害に巻き込まれた女性だったことなどに重ねようとしている。
ジェーン・カンピオン監督は「Netflixは現代のメディチ家だ。潤沢な資産があってはじめて美しさの重要性に気づくのだ。」と語っているそうだ。この映画が示す”有害な男らしさ”は、必ずしも男性だけに与えられたものではなく、特権(権力)を手に入れたとき、ひとはそれをどう行使するかによって立場が変化するということを言いたいらしい。同じテーマが「バービー」や「Tar/ター」などにも潜んでいるようだ。この映画のラストにはびっくりした。
Ⅳ カモン・カモン
この流れで、このマイク・ミルズ監督作品は、セクハラ問題が広がり、あらゆる人種や立場への配慮が広がることと比例して、いわゆるストレートな白人男性が誰からも相手にされなくなる、という実情なども紹介している。何かの事情が傾くと、反対側にバイアスが働いて価値観が逆転してゆく。この映画で正直な子どもたちが「スーパーヒーローのパワーがあったら何に使う?」という質問に「使わない」と応じるシーンが印象的だ。それは「自分自身でいることがパワーだから。」という理由が全体を包括するように思える。
第二章 スーパーヒーロー映画がもたらした荒廃
この映画については、町山智浩さんの著書でも解説されていて、「ストックホルム・シンドローム」などのことに言及されているが、本著ではさらにこの映画の外形を読み解いている。
主演のスカーレット・ヨハンソンがこの映画でディズニーを訴えたのは、この映画がストリーミング配信されることで、劇場収入により得られる歩合報酬が失われたことによるものだ。これはハリウッドの労働問題をさらに複雑化させるエピソードだ。
Ⅱ スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 寡占化の果て
なんとこの映画が公開された週末興行収入は、この映画が全体の92%を独占したという。ベン・アフレックに言わせると「映画館の新作のほとんどは若者向けになる。」ということらしい。ディズニーが20世紀フォックスを買収して、ストリーミングサービスのディズニー・プラスに資本を注ぎ込んだことで、ソニーがこの映画の公開で漁夫の利を得たような結果となったらしい。
それにしても、これらのDCコミックス系やマーベル系の劇場映画は、映画そのものではなく、映画に隠されたメッセージ探しをする傾向にあるという。そしてこれらの大作の監督には若い監督が起用され、ギャラの安い監督が言いなりの仕事をする。大物監督は、もうキャリアを積み上げることができないのだろうか。
Ⅲ ジャスティス・リーグ 揺動されたファンダム
ここでは、監督のジャック・スナイダーの作為的な行動、つまりファンを揺動してSNSで炎上させることで、この作品のディレクターズカット版を公開させようという動きを解説する。
・・・
ここまで読むと、映画そのものの未来がだいぶぼやけてくることを感じる。特にディズニーによる寡占化は、ほかの小規模なバジェットの映画製作を阻害するもので、大資本による映画で莫大な興行収入を獲得する映画だけが映画館にかかるような時代らしい。これは映画の問題というより、新自由主義経済の問題だ。
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