#スライ スタローンの物語 トム・ジムニー監督 「Norman Jewison」
博士と町山智浩さんの対談で紹介されていたので早速視聴してみた。
「スライ スタローンの物語」
言うまでもなく、この対談を20分ほど視聴して本編を見るのがいいだろうが、もっというと「ロッキー」を見直したくなる仕掛けになっている。
彼は、ともに映画に出演した息子を失っている。息子が子供の頃に出た映画で、親が子に諭すのは「負けても戦い続けること」というメッセージを残している。そしてこの映画は父子の物語なのだ。それもかなり悲惨で残酷な親子の葛藤。
映画に登場するスタローンの弟に言わせると「父は兄に嫉妬していた」という。本来であれば子供の成長を輝かしく思うべき父親が、なぜ晩年まで息子のスライ(シルベスター・スタローンの愛称)を憎み力でねじ伏せようとしたのか?スライはそれでも父親に一定の敬意を示し、映画に出演させたり、ポロ競技で対戦したりしたが、ことごとく父親にねじ伏せられる。
この痛々しい経験が「ロッキー」にも反映されている。この映画はある意味で映画の歴史を塗り替えた映画だ。それまでカウンターカルチャー中心だったアメリカ映画が、いつしか国家を背負い、保守的思想が広がり、新自由主義社会へと変化するきっかけとなった映画でもある。
しかしこの映画「スライ」の学びは、「ロッキー」という映画が必ずしも勝者の映画ではないということだ。サクセスストーリーとして見られがちな「ロッキー」で、主人公はアポロに負ける。エイドリアンと二人で通路を去るポスターの場面は映画に使われていない。もともと敗者の映画だったのを、プロデューサーの要請でラストを作り直ししたという。そうなると、もともとのシナリオ(シルベスター・スタローン脚本)は、どんなに頑張っても勝てない弱者を描いたということになる。それは彼が父親に叩きつけられた経験に基づいている。
もちろん、この映画は「ロッキー」のことだけを語る映画ではない。しかし、下積みから「ロッキー」で成功するまでの展開がこの映画の軸だ。関係者向けの試写会で、評論家など観客のほとんどが席を立った、という絶望的な思い出も本人から語られる。
肉体を鍛え、国家のために戦う印象の強いスタローンが、あまりにも辛い弱者の心理を背負っていることに感動を覚える。
ついでだが、映画の中に「冬のライオン」(若き日のアンソニー・ホプキンス!)や「セールスマンの死」などに言及しているところもある。チャップリン研究の第一人者レオス・カラックスがスタローンの「パラダイス・アレイ」を高く評価しているというあたりも興味深い。
Netflix『スライ/スタローンの物語』はシルヴェスタ・スタローンの「自伝」映画。「暗く心を閉じたランボーは私の親父そのもの。ロッキーは私が欲しかった父親像だ」スタローンの生涯は父との葛藤だったのだ。https://t.co/Vkh1DKwLky
— 町山智浩 (@TomoMachi)
彼の生まれそだったヘルズキッチン(いまは高級住宅地)が「イン・ザ・ハイツ」という映画に重なってゆく。
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ノーマン・ジュイソンが97歳で亡くなった。社会派の映画監督だった。「ローラーボール」とかアル・パチーノが弁護士役の「ジャスティス」などを映画館で見た記憶がある。
— Ugry (@BobUgryHossy)
