#ゾンビ化するアメリカ #町山智浩 著
このブログもいよいよ町山智浩さんの応援ブログの様相を呈してきたが、昨年11月に町山さんが文藝春秋から出された本を読ませてもらった。7月に出した「町山智浩のアメリカスーパーヒーロー映画 徹底解剖」に続けて出された。
- ゾンビ化するアメリカ 時代に逆行する最高裁、州法、そして大統領選 USA語録 (文春e-book)
- 文藝春秋
- Digital Ebook Purchas
文藝春秋に連載されている記事のおまとめ本なのだが、タイトルの意味は前書きに示される。
次の大統領選に
トランプが出馬すべきでないというアメリカ人60% 共和党員30%
同じく
バイデンは出馬すべきではないというアメリカ人70% 民主党員51%
つまり、かつて先進的な国だったアメリカで、終わったはずのお年を召した二人がゾンビのようにアメリカを引きずろうとしている、という話題が中心となる。
政治的な話題としては、フロリダ州知事のデサンテス氏の話題が中心だ。過激で頭のいいトランプとまで言われる共和党員のデサンテスは、「難民を廃棄」したり、「黒人の歴史を学校で教えることを禁止」したり、自分の政策を非難する「ディズニーの自治権を奪ったり」する過激なやりかたが支持されているという。ここで紹介される「究極のキャンセル法」というのがすごい。
過去に奴隷制度を支持した政党の許可を取り消す
という信じがたい政策だ。つまりフロリダから民主党という存在自体を消してしまうという法案だ。
ほかにもカニエ・ウェストあらためイェ(Ye)ウェストのどうかしている行動の数々も、デサンテス支持が広がる過激な行動と重なり合う。自分はナチが好きだと宣言して、最大スポンサーだったアディダスから契約を切られたりしている。狂っているというのが正しいようだ。
また、黒人の最高裁判事のクラレンス・トーマスが、中絶禁止を支持する法案に賛成したり、アファーマティブ・アクションという教育格差是正政策を違憲とみなしたり、同じ黒人が苦しむ方針に偏る判決を次々に繰り出しているらしい。このことは、町山智浩さんがこの本の発売直後、11月のTBSラジオ「こねくと」を通じてこの本のことを簡単に紹介している。
ほかにも話題は盛りだくさんなのだが、最後にアイルランドのことに関する話題が極めて印象的だ。このことは去年の夏に、同じラジオ番組で町山さんがシネイド・オコナーについての話題を取り上げていたことに重なる。このブログでも「アイルランド現代史」という本を3回に分けて紹介した内容にも関係している。
この本が出版された直後に、華やかな経済成長を成し遂げたかつての貧困国アイルランドで、移民などをめぐる「ダブリン暴動」が起きていることは、とてもショックだが、この本の「ゾンビ化するアメリカ」を冷静に読めば、これもまた同じベクトルの延長に分断のきっかけが隠されていることを察することができよう。
日本で漠然と過ごすと、世界から取り残されて沈没してゆくこの国の実情を見過ごしてしまう。高度成長やバブルの繰り越しで延命してきたが、「下には下がいるさ」という楽観論がデフレに飲み込まれ、もうこの国より下がない、というどん底まで突き落とされている。しかもそのツケをさらに消費税という形で国民に押し付けようとしているらしい。
町山智浩さんのこの本は、アメリカのことを書きながら、アメリカの言いなりとなって植民地化状態の日本のことを厳しい目で見つめている本でもあるのだ。
【町山智浩さんが過去に出された本】
映画には「動機」がある 町山智浩 - dalichoko
- 映画には「動機」がある 「最前線の映画」を読む Vol.2(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)
- 集英社
- Digital Ebook Purchas
- 町山智浩のアメリカスーパーヒーロー映画 徹底解剖
- イースト・プレス
- 本
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