#ダリチョコ の映画とグルメ

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キネマ旬報ベストテン


今年もキネマ旬報ベストテンが発表された。



役所広司さんの主演男優賞はともかく、主演女優賞の趣里さんには驚いた。受賞作「ほかげ」は未見だし朝ドラも見ていないが、きっと偉大な両親の血が彼女の才能を開花させたのだろう。


キネマ旬報 2024年2月増刊 キネマ旬報ベスト・テン発表号 No.1938
キネマ旬報 2024年2月増刊 キネマ旬報ベスト・テン発表号 No.1938
キネマ旬報社


日本映画は阪本順治監督「せかいのおきく」、外国映画は「TAR/ター」(トッド・フィールド監督)だった。(詳細はこちら)



自分の自己満ベストテン(と比較しても、キネ旬の評論がだいぶかけ離れているような気がするのは仕方ないが、日本映画においては「福田村事件」(森達也監督)が評論家で第4位、読者選出でなんと第2位(1位は「Gメン」)だったことは驚きと救いがあった。森達也監督にあらためて敬意を表したい。日本映画はまだ未見の映画が多いが、見た映画から「君たちはどう生きるか」「怪物」のほか、「ゴジラ -1.0」がランクイン。読者選出では「#正欲」「市子」がベストテンに選ばれている。文化映画では「国葬の日」(大島新監督)が8位だった。


対して、外国映画は評論家も読者選出も全て鑑賞している。前出の「TAR/ター」と「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」がそれぞれのカテゴリーで1位と2位を分け合ったほか、少し意外だったのは「枯れ葉」(評3位、読6位)「イニシェリン島の精霊」(評6位、読5位)。いずれの映画も、いわゆるハリウッドなどの大きな資本とは無縁の映画の映画だが、このあたりにキネ旬の特性が示された印象だ。どちらもセリフを排し、静かに物語が進むドラマであった。敢えてもう1本加えるならば「エンパイア・オブ・ライト」(評8位、読8位)。こちらもまた静かな映画だが、映画愛があふれる素晴らしい映画で、自己満ベストテンでもランクインさせた映画だ。読者選出で4位にランクされた「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」は、前年の「トップガン マーヴェリック」同様、トム・クルーズという偉大な俳優に対するアプローズだろう。これはこれで納得できる。


これらを近年のランキング作品に照らしてあらためて考えると、昨年の「ケイコ 目を澄ませて」から「コーダ あいのうた」へと遡る、言論封殺を重ねるドラマから、言葉で表現できないことを受け入れて、静かにその佇まいで見せる映画、あるいは静かではないが、人物が体全体で意思を示そうとする映画がクロスオーバーした年だった思える。それは一種の混乱が社会を覆うからであり、且つ貧困と格差と偏見がさらに加速することを半ば諦めかけているようにも感じさせる結果だったように思えてくる。


時代の変節は止められないが、明らかに悪しき方向へと向かおうとする社会にあって、森達也監督や足立正生監督のような、社会に抗おうとする強い意思を持つつくり手が出てこないことを残念に思う。時代とともに、興行より芸術を意識したキネ旬に学んだ身としては、教科書たるキネ旬にいささか迎合傾向に違和感をおぼえる。生き残るために仕方がないのかもしれないが。


2023年 キネマ旬報 2023年2月下旬号 - #ダリチョコ の映画とグルメ



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